僕は発展途上技術者

クックパッド * 百式 コミュニティ運営に関する勉強会で学んだこと

IDEA * IDEA で募集がおこなわれていたカジュアルな勉強会に応募して行ってきました。テーマは「コミュニティ運営」。


» コミュニティビジネスについて勉強した | IDEA*IDEA


クックパッドにはまったくおよびもつかないのですが、僕も Ruby on Rails で「あとで行く」や最近リリースしたばかりの「ピクイズ」といったサービスを運営しています。月間2億PVを超え、Ruby on Rails で運用しているサイトとしてはおそらく国内最大サービスの秘訣を聞いて、少しでも参考にしようと思ったのです。


が、しかし。。。集まった参加者からのコミュニティ運営に関する質問に、クックパッド CEO の佐野さんが答えていくという形で勉強会は進められたのですが、その答えの多くは良い意味で僕の(そしておそらく参加者の多くの)予想を裏切ってくれたのでした。


コミュニティサイトをクックパッドレベルまでの成功に持っていくためには、ユーザーを増やし、PV をどんどんあげて、広告収入で儲けるというのが一般にイメージされる図式だと思います。参加者からの質問の多くはそうした視点のものでしたし、僕が挙げた質問も、「サイトを見てもらうだけじゃなくコンテンツを作ってもらう秘訣は何ですか?」とか「ユーザーからの機能要望に対してはどうしていますか?」というように、


「サイトのコンテンツを充実させる」 or 「良い機能をどんどん追加する」 => ユーザーがたくさん来るようになる => PVアップ => 収益化


を意識した質問でした。


ところが佐野さんは、そうした「一般的にはこうだよねえ」と思われる考え方とは異なる逆説的な考えを披露してくださいました。面白いなあと感じた点をいくつか挙げてみます。


「コミュニティ」という言葉が嫌い


勉強会のテーマが「コミュニティ運営」であるにもかかわらず、のっけからこの言葉。


「コミュニティ」と言うと、人を同じ場所にどんどん集めて、その集まりを大きくしていくというイメージがあります。でも、人が一箇所に集まり、互いの距離が近過ぎてしまうと、トラブルが頻発するようになるし不快にもなってきちゃいます。馴れ合いが起こったり、元々その場所にいた人と新しく来た人との摩擦が起こったり。


「使っている人の満足度を第一に考えている」と佐野さんは何度となく口にしていましたが、ユーザー同士の距離には快適と思える距離があって、その距離を保てるようなサイト設計を心がけているのだそうです。具体的には、あえてたくさんクリックしないとたどりつけないようになっていたりだとか、コメントに文字数制限を設けたりだとか。。


あえて不便にするような方法を取るということに驚いたのですが、もっと驚いたのはこうしたことをサービス開始当初(10年前!!)から考えていたのだとか。すごいなあと思いました。


アクセス数を増やすことが目的ではない


佐野さんの口から繰り返し出てくるのは、「料理を楽しくする」とか「ユーザーの満足度が大事」という言葉。「アクセス数を増やす」「ユーザー数を増やす」ことが目的ではない、と何度も口にするのです。


ユーザーが増え、アクセス数が伸びてきて、サーバーの許容能力を超えてくると、レスポンスが悪くなってしまいユーザーの満足度が減ってしまいます。だからサーバーリソースが追いついていないときには、ユーザー数が増えすぎてしまうのは困りものなのだそうです。


ユーザーがサイトを見たいと思ったときにちゃんと見られるようになっているのか、いらいらすることなくサッと見られるようになっているのか、ということをいつも気にしているのだそうです。「アクセスの先に生活感を感じている」とおっしゃっていました。


アクセス解析で見る指標として、PV(ページビュー)ではなく UU(ユニークユーザー)を重視している。なぜかという問いに対して、「人に対してサービスを展開しているので」という言葉が印象的でした。


エンジニアに求めるものは技術力じゃない


エンジニアの僕にはこの言葉が一番印象に残りました。


この言葉に込められていたのは、もちろん技術力も大事だけど、「使ってくれる人のことを考えてものを作るこころが一番大事」だということなんじゃないかなあ。


佐野さんが挙げた例なのですが、たとえば「幼稚園の送り迎えを快適にする」というサービスがあったら、その目的を達成できるサービスをちゃんと作れることが大事だ、と言います。


このとき、エンジニアに必要なのは、高度なアルゴリズムを使う能力でも Javascript をばりばり使いこなす能力でもあるいは効率的で綺麗なコードを書く能力でもなく、送り迎えする人の立場に立ってわかろうとする気持ちだったり、あるいは自分自身が送り迎えをするという体験なんだと思います。


懇親会のときにクックパッドのエンジニアに話を聞きました。少人数であるにも関わらず、億を超える PV をさばき、それだけのユーザーに満足してもらえるクオリティの機能を提供しているのだから、皆それぞれかなり高いレベルの技術力を持っているはずです。でも、それと同時にみんなが料理することが好きで得意だ、ということを聞いてハッとしたのでした。


「コードばっかり書いていちゃ良い技術者になれない」


のだ、と。


Rails を開発した David Heinemeier Hansson 氏が、「Rails で高めた生産性で稼いだ余剰時間を、さらにプログラミングに費やすのではなく、他のことのために使おう」といったことを言っています。


» Ruby on Railsの作者より:高まった生産性を仕事を余計にこなすためではなく自分の将来に向けて使おう - himazu blog より


勉強会の日の数日前に読んだエントリーだったのですが、それがそのとき思い出されたのです。


料理をしたり、絵を描いたり、スポーツをしたり、英語以外の言語を学んだり。。。とプログラミング以外のことをすることで、新しいサービスのアイデアが浮かんでくるかもしれないし、新しい方法を考えついてそれをプログラミングにも適用できるかもしれない。人間力といったらいいのか、それを高めることが大切だということを実感したのでした。


まとめ


「コミュニティ運営」について学んだのはもちろん、「みんなはこう言っているけど、ほんとうにそうなの?実は違うんじゃないの?」というスタンスを持つことの大切さ、最後にはエンジニアとしてあり方みたいなことも気づかされた大変充実した勉強会でした。


佐野さん、百式管理人、それに懇親会でお話を聞かせていただいた参加者の皆さん、クックパッドの方々(おいしいお料理もいただきました)に感謝です。


以下、参加者の方々のエントリーです。


» F's Garage:コミュニティビジネスに大事なたった一つのこと


» 2008-11-01 - satake7’s memo


» watchpad.jp 開発チームブログ» ブログアーカイブ » 百式|COOKPADの勉強会に参加


» 百式 カジュアルな勉強会 コミュニティ運営に行ってきた | 芸人社長のブログ


» 月間 2.8 億 pv!クックパッドの運営ノウハウについて聞いてきた - 19790401173.4


» Cookpad でコミュニティについて勉強してきました (ラボブログ)


プロフィール

株式会社まちクエスト代表、つくる社LLC代表。

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