僕は発展途上技術者

お手軽お気楽に技術書典に参加する方法(前編)

技術書典6に初めて参加しました。アルバイトを含め、接客業をこれまでやったことがないので、何か物をお客さんに売るという経験は初めてでした。

Maker Faire などには参加したことがあるので、お隣の方には「慣れていますね」なんて言われましたが、でも、お金を受け取り、お釣りを渡して商品を渡すというのはたぶん初めて。

技術書典4と5に一般客として行ってみて、漠然と楽しそうだな、僕も技術書を書いて売ってみたいなとは思っていたのですが、直接のきっかけとなったのはCoderDojo界隈で有名なTGZNさんが「技術書典6の募集始まってますよー」って親切に教えてくださったことでした。

とはいえ、原稿の執筆もそうですが、製本したりするのも大変だろうなあとは思っていてかなり迷ったのですが、自分のコンフォートゾーンを抜け出す経験を月に一回はやるということを心がけているので、思い切って参加を申し込みました。

昨年執筆した商業誌のScratchで楽しく学ぶ アート&サイエンスも一緒に頒布しようとは思っていたので、それにあわせて中級者、大人向けのScratchネタにすることに決め、どうせならマニアック過ぎて出版社からはNGが出そうなテーマにしようということで「大人のためのScratch - Scratch 3を改造しよう」というコンテンツに決めました。

とはいえ、「実践ARKit」を書かれた堤さんの技術書でご飯は食べられるのか? #技術書典を始め、いろんな方の技術書典関連ブログエントリーを読んでいて実感していたのは、コンテンツもそうですが皆さん本の装丁、デザインにとてもこだわって作られているということ。

本は好きなのですが、電子書籍でもいいやと思っている派の僕には、手に取るモノとしての本にそれほどのこだわりはなく、果たしてそれを作ることに情熱を注ぐことはできるのだろうかと思っていました。

外注するか、誰かそういうことが得意な方と一緒にチームを組むという選択肢もあったのですが、勝手が良くわからない初参加の身としてはそこまで他人を巻き込んだり、コストをかける勇気がありませんでした。

一方、Scratchをネタにした場合、Scratchがグラフィカルなプログラミン環境であるゆえ、たとえばブロックの操作は目で見れば一発でわかるのに、それを文章にするとどうしても冗長になったりわかりにくくなる面があります。

グラフィカルな環境が主体ということでScratchと似た面があるUnityを学んでいたとき、is8rさん作成のLearn-Unityが、どの技術書よりもわかりやすかったのですが、その一因にGifアニメが多用されているというのがありました。その記憶が強く残っていて、ハリーポッターの世界に登場する新聞のように、動く本が一番Scratchに向いているのになあ、と思っていたのです。

  • 製本しなくてすみそう
  • 動く本が作りたい

この2つを満たすものとして、オンラインコンテンツを読めるサイトを作り、パスワードロックをかけ、そのパスワードを頒布すれば良い、という結論にいたりました。

技術書典的には、少し邪道な気もしたのですが、サークル参加要項を確認してみても、

頒布形態は、紙の書籍(いわゆる同人誌)、デジタルコンテンツ、QRコードを印刷した紙などなんでも構いません

とあったので、この方針に決めたのでした。(後編に続く)

Scratchで楽しく学ぶ アート&サイエンス
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お手軽お気楽に技術書典に参加する方法(後編)

前編では、頒布物をオンラインコンテンツに決まるまでの経緯を書きました。後編では、コンテンツをどうやって制作していったか、そして、技術書典当日の振り返りを書いていきたいと思います。

コンテンツ自体は、かねてから構想していたというのもあって比較的順調に書き進めていくことができました。

お金をいただくコンテンツとそうでないブログなどにザッと書いたコンテンツの違いは、どれだけ第三者の目が入り校正がされているかだということは、これまでの商業誌や雑誌の記事執筆で感じていたことだったので、Kaori Han、uchiyama2000 にお願いしてレビューしてもらいました。おかげで、独りよがりではない、広く誰にでもわかってもらえる説明に改善されていきました。

当初は静的サイトで公開しようかと考えていて、Golang製のHugoなど検討したのですが、自分でカスタマイズしたくなったときのことを考えRuby製のJekyllに落ち着きました。

ところが、

  • コンテンツを更新したときや、続編を書いたときに連絡できるよう読者のメールアドレスが欲しい。
  • クーポンコードを入れると閲覧できる仕組みにしたい。
  • コンテンツの一部は誰でも読めるように公開したい。
  • ゆくゆくは英語版、中国版を用意したいので、言語切り替えが欲しい。
  • 技術書典ではクーポンコードが印刷されたカードを販売すればよいが、いずれはクレジット決済に切り替えたい。
  • コンテンツは Markdown で書きたいんだか、例えば Scratch プロジェクトの embed タグが簡単に書けるような独自拡張も欲しい。

などなど、やりたいことが増えてきて、これら全てを満たすCMSや、ASPサービスを見つけることができなかったので、システムをRuby on Railsで自作することにしました。

これを決意したのが技術書典2日前の金曜日夜でした。

また、その頃勉強していた Docker も使いたいなと思い、Docker コンテナ上で開発し、本番環境用のコンテナは DigitalOcean 月額5ドルのサーバー上に配置することにしました。

このブログシステムも Rails で自作しているのもあって、コードをあちこちから拝借して何とか当日の2:00頃にはコードを名刺シートに印刷するところまで完成し、ようやくロゴを作ってサークルカットをアップロードしたのが3:00頃。見た目を重視しないにもほどがある。

結局のところ、多くの方が本の装丁、デザインに情熱をかたむけるところを、僕の場合はシステムの方に傾けたかったということなんだと思います。時間との闘いでシステムを構築していくのは、1人開発合宿をしているようで、楽しかった。

さてさて、無事にシステムは出来上がり、技術書典の振り返りは以下の通りです。

Keep(次回も続けたいこと)

  • 技術書典的には邪道か傍流かもしれませんが、新刊をオンラインコンテンツに絞ったのは正解でした。かかるコストは自分の人件費くらいなので、赤字になることはないですし、僕のように自作するという方法を選ばず、既存のCMSやASPサービスを使えばもっと手際よく用意できるはずです。お手軽に、とりあえず最初の一歩を踏むには最良の選択肢ではないでしょうか?
  • とはいえ、オンラインコンテンツのみだと引きが弱い。今回一緒に頒布物として展示していた「Scratch で楽しく学ぶアート&サイエンス」を手にとってくれる方が多く、その内 Scratch を知ってそうな方には「Scratch 3を改造しよう」を薦めてみるということをしてみたのですが、まあまあうまくいったかと思います。

Problem(問題点)

  • 一番の問題点は、ほぼ一人売り子体制だったため、ほとんどほかのサークルを見ることができなかったこと。とはいえレビューしてもらった uchiyama2000 には一緒に手伝ってもらい、とても助かったのですが、交代して一人で他を回ってくるのはなかなかに気が引けて、結局ほぼ飲まず食わずで、おじさんの身体には応えました。
  • 装丁もそうですが、展示の仕方ももうちょっと工夫のしどころがありそうです。

Try(次回チャレンジしたいこと)

  • 売り子としてだけで手伝ってくれる方をお願いするのはどうしても気がひけるので、誰か一緒にコンテンツを提供する側として参加することを募集したいです。機械学習関連で何か書きたいと言っている uchiyama2000 に期待。
  • 隣のブースの方が、ポシェットがついた布をブースに敷いており、そのポシェットにおつりなど様々なものを入れることができていて凄い賢いなと思って聞いたら、「あの布」という名前で売っているらしいという情報をゲット。次回は絶対それを用意します。

さて、売り上げの方はというと、アート&サイエンスは、定価 2100円 + 消費税のところをおつり用意するのがめんどいということで 2000円で販売し、

2000円 x 16 = 32000円

オンラインコンテンツの「Scratch 3 を改造しよう」の方は、

500円 x 30 = 15000円

で合計 47000円でした。

利益で計算すると、アート&サイエンスの方は著者割りで仕入れているとは言え、値引きしているのでトントン。オンラインコンテンツの方は原価はかかっていないので、そのまま100パーセント利益です。

「アート & サイエンス」は、初版分はすでに印税をいただいているので売れても売れなくても変わりはないのですけど、印税8パーセントとして計算すると、

2100円 x 0.08 x 16 + 500円 x 30 = 17688円

でした。

これから英語版、中国語版を用意し、日本人ユーザーの100倍はいる全世界の Scratch ユーザーに向けて販売していこうと思うので期待大 :) です。

技術書典、結論としては参加してとても楽しかったので、次回も絶対出るつもりです!

プロフィール

株式会社まちクエスト代表、つくる社LLC代表。

Scratchで楽しく学ぶ アート&サイエンスRaspberry Piではじめる どきどきプログラミングを書きました。

Amazonから図書館検索 Libron、iPhoneアプリ ひらがなゲーム かなぶん を作っています。

Email: webmaster at champierre dot com

Twitter @jishiha

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