いまさら Lirbon を紹介する
Amazonのページで本を検索すると、最寄りの図書館にその本があるかどうかをAmazonのページに表示してくれる Libron を更新しました。10年以上メンテしているので僕には今さらなのですけど、時を経てこのツールを知らない人もでてきたと思うのでいまいちど紹介したいと思う。
どんなツールなのかはこのアニメーションgifを見てもらうのが一番てっとり早い。
このAmazonのページから別のページに移動する必要がなく、ページ上にその本が図書館にあるかどうかを表示してくれるところが、Libronを人に見せると「どうやってるの?」と驚かれるポイントだ。Chromeの拡張機能を使うとこれが実現できる。
Amazonの本のページのURLには、ISBNコードという各書籍にわりふられたユニークな番号が含まれており、各図書館の検索ページでこの番号を検索すればその図書館に本があるかどうかがわかる。この作業を超高速にプログラムが裏でやってくれて結果を表示するということをLibronはやっている。
さて、全国には7400以上の図書館があり、図書館の検索ページの仕様はおおまかには似通ってはいるのだが、微妙に少しずつ違っている。最初は地道に、僕が住んでいる調布市を中心に少しずつ対応範囲を広げていったが、他県で対応してくれる協力者が現れていったとはいえ10県くらいで発狂しそうになった。
そんなときに登場したのが https://calil.jp という画期的なサービスで、この気の遠くなる地道な作業に本気で取り組み事業化している。図書館に蔵書があるかどうかの結果をAPIとして提供しており、LibronはカーリルAPIを利用する形に変更した。
2010年よりAmazonのページは何度となく細かな部分が変わっており、その都度ちまちまと修正してLibronを対応させてきた。12年間メンテし続け今でも動いているということは、12年後も高い確率で動いているということだ。この間類似のツールはいくつかでてきたが、それらにはない老舗の利点と言える。
今Amazonで本のタイトルを検索すると、実はKindleのページがヒットする。そこから、同じタイトルの単行本のページに移動しないと蔵書検索して結果を表示できなかったのだが、今回のアップデートでKindleのページでも先回りし、図書館にその本があるかどうかを調べられるようにした。
Libronを外国の人にデモする機会があり、そのときに「How slick!」というコメントをもらった。聞き慣れない単語だなと思ってそのとき調べたら、「(表面が)ツルツルした」「滑らかな」という意味から転じて、「洗練された」とか「巧妙な」という意味があるらしい。
以来、僕はこのslickさをソフトウェアやプログラムを作るときの大事なポイントに置いている。AmazonのKindleのページから単行本のページにはボタンをマウスでクリックすれば移動できるが、そのボタンのリンク先の情報をプログラムを書いて自動で取得すればその1クリックの手間を省くことができる。
そうしたちょっとした手間の省略を積み重ねることで便利なシステムやソフトウェアができあがる。最近になって耳にするDXというキーワードも、なんてことはない、この手動でおこなっているひと手間ひと手間を自動化していって、ピタゴラスイッチのように連携してうまく動くようにすることに過ぎない。
Chromeの拡張機能というのは、このようにとても便利でパワフルなものだが、裏を返すとなんでもできてしまう、それこそパスワードの欄に打ち込まれた文字をどこかのサーバーに送るなんていう悪行も可能だ。拡張機能を使うときはその作者、開発者を信頼して使うしかない。
Libronの場合も僕を信じてください、と言うしかないのだが、加えて、拡張機能のソースコードは https://github.com/champierre/libron で公開しており、見る人が見れば、この中で不正なことをしているかどうかはわかるようになっている。
また、もし僕が飽きてしまったり、やる気がなくなっても、あるいは明日急にトラックに轢かれてしまっても、このソースコードを誰でも引き継ぐことができる。
2023/01/13 23:29:00