僕は発展途上技術者

年収300万円時代を生き抜く経済学


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企業での能力主義、年功序列の崩壊、転職が当たり前の社会など、日本は徐々にアメリカ化しており、これが進むと年収1億円超も夢ではないごく一部の勝ち組と、年収300万円の大多数の負け組とに日本人は分かれてしまうという趣旨。


そんな社会が本当に幸せな社会だろうかという疑問を投げかけているとともに、300万円でも人生を幸せに過ごす方法があると説く。


貧富の差が激しいアメリカ型への社会の転換ではなく、大多数の人が年収300万から400万円だが、がむしゃらに働くことをせず労働時間が短く、そして多くの人が人生を楽しんでいるように見受けられるヨーロッパ型の社会に向かって進んだ方がベターなのではないかというのが筆者の主張だ。


これにはなかなか考えさせられる。アメリカで生活してみると貧富の差・階級の差というものを痛感する。アメリカで生活する日本人のほとんどは、駐在あるいは現地の会社に所属していても割りに良い待遇、つまりは富める側に所属しているといっていいだろう。僕の場合も、幸運にも富める側だ。その場合は割合治安が良い場所に住むことができるし、医者にかかっても医療保険でカバーされ、車の保険に入ることもできるし、毎日の食事は安全な物を食べることができる。しかし、貧しい側に所属してしまったら悲惨な生活が待っている。非常に治安の悪い場所にしか住めないし、保険料が払えないため医療保険も車の保険もなし、食べものはとても安全が保障できないようなものを食べるしかない。


決してこれは大げさな話ではない。例えば医療費を例に取る。アメリカの医療費はびっくりするほど高い。長男の出産の際に妻の入院はたったの2日、それで軽く日本円で200万円近い額が請求される。救急車を呼ぶと10万円近い額を請求されるという話も聞いたことがある。しかしこれらは保険料を払うことができる人々にとっては問題ない。医療保険でほぼ全額カバーされるからだ。問題は、この保険料を払うことができない人々が大勢いるということなのだ。僕のように企業に勤めていると、企業の福利厚生の一環で、保険料の相当額が企業負担になっているようで、僕自身が払う額というのはせいぜい月2万円ほどだ。ところがそういう福利厚生が充実している会社に所属していないと、保険料は3倍あるいは4倍の10万円近い額になるそうだ。そうした立場の人々の収入が高いとは思えないので、この額はかなりの負担。よって医療保険を払わない、払えない人が出てくる。300万円ほどかかる盲腸の手術代を払える見込みがないため、医者にかかることができずに命を落とすという例があるとのこと。


自分が富める側に所属していることは本当にありがたいこと。この場合、アメリカの生活は楽しいと言って良い。しかしこんな社会が幸せな社会かどうかは大きな疑問。このようなアメリカ型社会を将来の日本の社会にしてしまっていいのだろうかと切に思う。



プロフィール

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